喫煙の健康への影響
米国国立がん研究所によれば、たばこの煙には250種以上の有害物質が含まれ、炭酸ガスやシアン化物などが代表的です。これらは肺に直接ダメージを与えるだけでなく、全身の臓器に影響を及ぼします。たばこを吸うだけでなく、受動喫煙でも同様のリスクが存在します。米国がん協会は、ニコチンがヘロインに匹敵する神経化学的作用を持ち、身体的・精神的な依存を強く引き起こすと指摘しています。
がんの罹患率
米国がん協会のデータでは、喫煙はがん死亡の約30%を占め、特に肺がんが最も多く見られます。「ライト」や「低タール」たばこでも、通常のたばこと同等のリスクがあることが国立がん研究所の報告で明らかになっています。ロサンゼルスのシティ・オブ・ホープ医療センター(1996年)の研究では、タール中のベンゾピレンがp53遺伝子を損傷し、腫瘍抑制機能を低下させることが判明しました。低タールたばこを深く吸い込むと、通常のたばこと同等のベンゾピレンに曝露され、同様のがんリスクが生じます。
心血管系への影響
ニコチンは血圧を短期・長期にわたって上昇させ、炭酸ガスはヘモグロビンと結合して酸素運搬能力を低下させます。さらに、たばこの毒素は血球や血管壁の付着を促進し、動脈硬化の進行を加速させます。その結果、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。肥満や高コレステロール、遺伝的要因と相まって、心血管疾患の発症確率が顕著に上昇します。
免疫系への影響
たばこの中の化学物質、特にニコチンは肺胞マクロファージの機能を阻害し、病原体への攻撃力を低下させます。マクロファージはサイトカインを産生し、免疫応答を司りますが、喫煙によりその産生が抑制されます。呼吸器から侵入する病原体に対する防御が弱まるため、喫煙者は感染症にかかりやすくなります。2007年の『Pediatric Research』の研究では、妊娠中に喫煙した母親の新生児は白血球生成が抑制され、出生後の感染症リスクが高まることが示されました。
呼吸器系への影響
たばこの毒素は気道を瘢痕化させ、肺胞の構造を破壊します。また、気道狭窄や喉頭・気管の炎症を引き起こします。米国環境保護庁は、受動喫煙が幼児の肺炎や気管支炎の原因となり、喘息発作を誘発することを報告しています。たとえ喘息の既往がなくても、子どもは喫煙環境にさらされることで症状が出やすくなります。
