膝関節置換術の歴史
膝関節置換術は、患者の膝関節(全体または部分)を人工素材に置き換える手術です。痛みを和らげつつ、できるだけ機能を維持できるよう設計されています。主な適応は変形性関節症ですが、他の疾患でも適用されることがあります。
初期の歴史
最初の膝手術は1891年、ドイツの外科医テオフィルス・グルックによって行われました。彼は筋肉や脂肪、ナイロン、豚の膀胱などさまざまな素材を試し、関節のクッション材として使用しました。さらに、象牙を用いた真の膝関節置換術も実施し、象牙製の関節を石膏や金属で固定しました。
1960〜70年代
19世紀末から1950年代にかけて大きな進歩は見られませんでした。グルックの象牙・石膏方式は金属やプラスチック部品に改良されましたが、依然としてヒンジ型で柔軟性に欠け、合併症や破損が頻発しました。1974年、マサチューセッツ総合病院の研究チームが丸みを帯びたプラスチック部品を開発し、従来の膝構造に近い「トータルコンデラル膝関節置換術」と呼ばれるデザインを提案しました。
モバイルベアリング置換術
1970年代後半から1980年代初頭にかけて、可動式ベアリング(モバイルベアリング)を採用した膝関節置換術が開発されました。この技術は、固定ベアリングに比べて回転自由度が高く、術後の可動域と機能性を向上させます。ニュージャージー州のマートランド病院で外科医フレッド・ビューヘルとエンジニアのマイケル・パパスが共同で開発した「ビューヘル‑パパス」システムは、現在でも広く使用されています。
低侵襲手術
1990年代までは、膝関節置換は足長ほどの前方切開が必要な大規模手術でした。術後の回復は長く、筋肉へのダメージも大きかったのです。1990年代後半以降、側方から3〜5インチ(約7〜13センチ)の小さな切開で手術を行う低侵襲法が普及しました。大腿筋の損傷を避け、膝蓋骨を横にずらすだけでアクセスできるため、回復が速く合併症も減少しました。
コンピュータ支援・ロボット置換術
21世紀に入ると、医療技術の進歩によりロボット膝関節置換術が実用化されました。CTスキャンで得た患者個別のデータを元に、手術計画を立案し、コンピュータ支援ソフトとロボットアームで切開やインプラントの位置決めを行います。人間の目や手よりも高精度に操作できるため、位置ずれや過剰切除といった従来の問題を大幅に低減します。
