人間の去勢手順と背景
目的と歴史
1990年代、米国の一部州では性犯罪者に対し、外科的または化学的に去勢を義務付ける議論が行われました。子どもへの性犯罪を防止できると期待された一方で、去勢だけで性的欲求が完全に減少するわけではなく、他の犯罪行為への抑止効果も必ずしもあるとは限らないという反論もあります。現在、米国の6州で再犯性犯罪者に対する化学的去勢が許可または義務付けられていますが、他の西欧諸国での適用は極めて限定的です。
去勢はがん予防の側面もあります。血流が低下し血管内皮細胞が死滅することで前立腺がんのリスクが減少する可能性が指摘されています。また、精巣がんの拡散を防ぐために、がん化した精巣を摘出する手術は標準的な治療です。さらに、古代の宗教団体が信仰の証として去勢を行った例や、精神的・感情的な変化を求めて自ら去勢を望む男性も存在します。
化学的去勢
医師の管理下で、シプロテロンなどの抗アンドロゲン薬を数週間にわたり投与します。テストステロンなどのアンドロゲンは男性の一次・二次性徴を形成・維持するホルモンで、テストステロンが低下すると性欲や性的興奮、性的思考が減少します。性犯罪者に対しては、プロゲスチン系の注射剤(デポ・プロベラ)が使用されることがあります。化学的去勢は精巣を除去しないため、薬物投与を中止すればテストステロンと精子の産生は再開します。
外科的去勢
外科的去勢は、外科医が陰嚢に切開を入れ、精管(精子を運搬する管)を結紮・切断した後、精巣を摘出します。残した精管は陰嚢内に戻し、切開部は縫合して閉じます。この手順は左右の精巣それぞれに対して行われます。
バーディッツ去勢(Burdizzo)
主に牧場で使用されるバーディッツは、鉗子状の器具で精管と精巣への血管を挟み込み、血流を止めて精巣を死滅させる方法です。血流が途絶えると精巣は自然に吸収され、不妊状態になります。西欧の医療現場では使用されませんが、自ら去勢を望む男性がこの手段を取ることがあります。血管が完全に圧迫されないと神経損傷のリスクが高く、極めて痛みを伴うため、数週間にわたる鎮痛剤の使用が必要です。
縛帯切除法(Banding and Cutting)
医療目的では用いられませんが、ゴムバンドを陰嚢上部に極めて強く巻き付け、その下の組織(精巣・陰嚢)を切除する手法です。バンドが傷口を閉鎖する役割を果たしますが、切除が不正確だと大量出血を起こし、緊急医療が必要となります。
術後ケア
医療的に去勢を受けた男性には、外科手術後の疼痛管理として鎮痛剤が処方されます。化学的去勢の場合は、嘔吐や吐き気を抑える薬が併用されることがあります。
