高齢者への麻酔の影響
ほとんどの外科手術では麻酔が不可欠です。高齢者が手術を受ける際も麻酔が行われます。一般的に麻酔薬は手術後に体内で速やかに分解・排泄されると考えられていますが、高齢者の代謝能力や排泄能力に不安が残ります。
麻酔の仕組み
メイヨークリニックによると、全身麻酔は脳の神経伝達物質、血流、代謝機能、脊髄液などに影響を与えます。手術中は痛みなどの刺激に対する神経応答を抑制することが重要で、脳が呼吸中枢への指令を出さないため、機械的な人工呼吸が必要になることがあります。
報告されている懸念事項
米国国立医学図書館の報告によれば、1950年代から高齢者は手術後に脳機能の問題を抱えるケースが指摘されてきました。術後認知機能障害(POCD)は、麻酔を受けたすべての患者に見られる現象ですが、通常は数週間で改善します。
POCDと高齢者
2005年5月に『American Journal of Hypertension』が、1998年の『Lancet』掲載論文を再検討し、麻酔を受けた高齢者のうち、3か月以上POCDが続くケースが多数あることを報告しました。残存症状がある患者は、手術後1年以内に死亡リスクが高まることが分かっています。特に脳卒中の既往歴がある高齢者ではリスクが顕著です。
高齢者の術後合併症
Merck Manuals Online Medical Libraryによると、認知機能の回復遅延は高齢者の麻酔後に最も頻繁に報告される副作用です。ただし、麻酔だけが原因とは限りません。術後疼痛管理に用いられる薬剤や、既存の服薬との相互作用、手術自体による精神的ストレスも認知機能低下に寄与します。
術後の認知症・せん妄
急性混乱状態(ACS)やせん妄は、麻酔を受けた高齢患者や手術前の患者に頻繁に見られます。入院環境への不慣れや不快感、術前の薬剤投与が原因となることがありますが、特に認知症の既往がある高齢者ではせん妄の発生率が高くなります。
