卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク要因と対策

症状

軽度のOHSSでは、腹部の膨満感や軽い腹痛、吐き気、下痢、体重増加がみられます。これは、排卵誘発薬により卵巣が一時的に腫れ、エストロゲンやプロゲステロンが上昇することで消化器系のバランスが乱れ、脱水しやすくなるためです。

重度の場合は、数日で体重が約4.5kg増えることがあります。激しい腹痛、強い吐き気・嘔吐、めまい、息切れ、尿量の減少(茶色がかった尿)などが現れ、ふくらはぎや胸部に痛みが走ることもあります。卵巣が極端に大きくなり、胸腔や肺に液体がたまると、呼吸困難や致命的な状態に至ることがあります。

合併症

軽度の症状は、月経が来るか妊娠が成立すれば数週間で自然に改善しますが、重度の場合は速やかな医療介入が必要です。急激な体重増加、尿量減少、激しい嘔吐、激しい腹痛(へそ上下)が続く場合は、すぐに医師に連絡してください。まれに卵巣がねじれて血流が遮断され、卵巣摘出手術が必要になることや、胸水・腹水で呼吸が困難になるケースがあります。腎臓や肝臓の機能障害、血栓・脳卒中が起こるリスクは、約45万〜50万例に1例です。

原因

OHSSは体外受精(IVF)や子宮内胚移植(ET)などの排卵誘発治療の副作用として約10%の患者に発生します。特に、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)注射で排卵を促した場合、注射後10日以内に症状が出ることが多いです。稀に、排卵誘発を行わずに妊娠した女性でも自然に発症することがあります。

リスク要因

すべての排卵誘発患者がOHSSになる可能性がありますが、以下の要因があると発症リスクが高まります。

  • 30歳未満で体重が軽い女性
  • 過去にOHSSまたは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の既往がある方
  • 多数の卵胞が形成された場合、またはhCG注射前にエストロゲン濃度が高い場合

特に若年のPCOS患者はリスクが高いとされていますが、リスク要因がなくても発症することがあります。

治療

症状が疑われたらすぐに担当医に報告し、以下の対策を行います。

  • 不妊治療薬の投与を中止し、性行為を控える
  • 腹部の余分な液体を除去し、体重・尿量・体調を継続的にモニタリング
  • 軽症は市販の鎮痛・制吐薬で対処
  • 中等症は尿量測定、血液検査、超音波検査を実施し、処方鎮痛薬を使用
  • 重症は入院して点滴、必要に応じて手術(卵胞破裂や臓器障害の修復)を行う

激しい運動は血栓のリスクを高めるため避け、軽い活動は適度に行うことが推奨されます。

予防策

OHSSを防ぐための主なポイントは、卵巣と卵胞の発育、血中エストロゲン濃度を綿密にモニタリングすることです。リスクの高い患者には、最小限のゴナドトロピン投与で排卵を誘発し、卵胞が急速に増大したりエストロゲンが過剰になる兆候が見られたらhCG注射を数日前に中止します。

hCGの代わりに黄体形成ホルモン(LH)やGnRHアゴニストを使用する方法、または成熟卵子・胚を凍結保存し、後日に移植する「凍結胚移植」も有効です。ただし、これらの方法は費用が高く、妊娠率がやや低下する可能性があります。さらなる臨床研究が進めば、より安全で効果的な治療法が開発されるでしょう。

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