心臓弁膜疾患のリスクと対策
人間の心臓は、1日平均で約10万回も収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り出しています。心臓は左右に2つずつ、計4つの腔(心房・心室)で構成され、それぞれに一方向に血液を流す弁膜が備わっています。弁膜は薄い組織のフラップでできており、血液が流入すると開き、逆流を防ぐために閉じます。
原因と診断
弁膜が感染、疾患、先天的欠損などで損傷すると、正しく開閉できなくなります。主な原因は以下の通りです。
- リウマチ熱:細菌感染後に免疫反応が心臓組織を攻撃し、弁膜に炎症と瘢痕を残す。
- 心内膜炎:溶血性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が心臓内壁(心内膜)に炎症を起こし、弁膜を破壊。
- 加齢による粘液様変性や石灰化:弁膜組織が硬化・肥厚し、機能低下。
- 先天性奇形:出生時から弁膜の形態が異常で、後年に症状が顕在化。
診断は、聴診器で聞こえる心雑音がヒントとなります。心雑音は、弁膜が完全に閉じない、または狭くなって血流が乱れるときに生じます。主な検査方法は以下です。
- 心エコー(超音波検査):非侵襲的に弁膜の構造と機能を評価。
- 心カテーテル検査・血管造影:より詳細な画像を取得し、重症例の治療計画に活用。
うっ血性心不全
弁膜が正常に機能しないと、心臓は十分な血液を送り出せず、血液が体内に滞留します。その結果、肺に水分がたまり呼吸が困難になり、足やくるぶしにむくみが出ます。主な症状は息切れ、倦怠感、胸痛、動悸です。重症例では失神することもあります。
血栓形成
損傷した弁膜表面は血流を乱し、血小板が付着しやすくなります。これが血栓の発生源となり、血栓は血流に乗って全身へ移動し、血管を塞ぐことがあります。特に脳血管が閉塞すると脳梗塞を起こし、認知障害や麻痺を引き起こします。
突然の心停止(SCA)
弁膜疾患は心拍数やリズムに影響を与え、不整脈を誘発します。不整脈が進行すると、心臓が突然収縮を停止する突然心停止(SCA)に至ります。心臓が止まると全身と重要臓器への酸素供給が途絶え、数分以内に脳障害や死亡の危険があります。救急時には除細動器(AED)による電気ショックで正常リズムに戻すことが不可欠です。
弁膜疾患は早期発見と適切な治療が予後改善の鍵です。定期的な心臓検査と生活習慣の見直しで、リスクを最小限に抑えましょう。
