生体同一性ホルモンの定義とホルモン置換療法の論争

バイオアイデンティカルホルモンの定義

医学や生理学で「バイオアイデンティカル」とは、ヒトが自然に産生する化合物と構造が完全に同一の、実験室で合成された分子(例:ホルモン)を指します。対照的に「非バイオアイデンティカル」化合物は、実験室で合成されたり、非ヒト生物から抽出されたものの、分子構造がヒトの化合物と異なるものです。

バイオアイデンティカル化合物の製造方法

ヒトのエストロゲンとプロゲステロンは、植物・動物に共通する四環炭素骨格を基盤としています。ヤムイモや大豆に含まれる天然化合物は、この骨格を持ち、科学者が容易にヒト細胞が産生するエストロゲン・プロゲステロンと同一構造の分子へと変換できます。これらは実験室で合成されますが、構造が同一であるためバイオアイデンティカルと呼ばれます。

ホルモン置換療法(HRT)とは

閉経やその他の原因で体内のエストロゲンやプロゲステロンが減少すると、実験室で合成した同様のホルモンで補うことができます。エストロゲン・プロゲステロンは生殖系以外にも骨密度や体温調節、睡眠、性欲などに関与しており、減少すると骨粗鬆症、ホットフラッシュ、夜間発汗、不眠、性欲低下などの症状が現れます。実験室合成ホルモンの投与は、これらの非生殖系症状を緩和することが知られており、ホルモン置換療法として広く用いられています。

HRTにおける非バイオアイデンティカル化合物の使用例

非ヒト生物から得られる非バイオアイデンティカル化合物も、合成コストが低いため利用されています。例えば、妊娠馬の尿に含まれる化合物や、レッドクローバー・特定の植物の葉に含まれる成分は、ヒトのホルモン受容体に結合します。これらを配合した製品(例:Premarin)は「天然」だと称されますが、構造がヒトホルモンと一致しないため、バイオアイデンティカル製品よりリスクが高いと批判されることがあります。

論争点

多くのHRT製品は米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けており、純度・安全性がヒト試験で確認されています。一方、医師が患者ごとに用量を調整したバイオアイデンティカルのカスタム調合薬は、FDAの承認対象外であり、予期せぬリスクや品質問題への警告が出されています。調合薬局は、個別化された用量によりリスクが低減し、症状に合わせた安全な治療が可能だと主張していますが、規制当局はその安全性を慎重に評価しています。

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