概要
ベイリサスカリス(学名: Baylisascaris)は、一般に「アライグマ回虫」と呼ばれ、アライグマだけでなくヒトや他の動物にも感染します。感染したアライグマは糞便中に数百万個の卵を排出し、卵は2〜4週間で感染力を持ち、環境中で数年生存します。回虫は宿主特異的ですが、さまざまなパラテンティック宿主(中間宿主)にも感染し、そこでの幼虫の生活史が他の回虫よりも危険性を高めます。
ヒトへの感染と症状
ヒトが環境中のベイリサスカリス卵を誤って摂取すると、卵は体内で孵化し幼虫となります。幼虫は腸壁を通過して血流に入り、全身へ移動し、肝臓、目、脳、脊髄などの臓器や筋肉に到達します。宿主体は幼虫を隔離・除去しようとしますが、組織障害を引き起こします。主な症状は嘔吐、倦怠感、肝腫大、協調運動障害、注意欠如、筋制御障害、昏睡、失明などです。症状は摂取した卵の量や幼虫の移動先によって数日から数週間で出現します。
感染の頻度
ベイリサスカリスはアライグマに広く分布し、特に米国中西部、太平洋北西部、西海岸、北東部、ミドルアトランティック地域で多く見られます。ヒトでの診断例は極めて稀で、米疾病予防管理センター(CDC)によると2003年に診断されたケースは25件、死亡は5件でした。動物間の感染はヒトよりも頻繁で、捕食による二次感染が起こります。
治療
幼虫が腸外へ移動した後は薬剤で直接駆除できないため、治療は困難です。駆虫薬は消化管内でのみ有効で、全身への効果は期待できません。感染が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な抗寄生虫薬や症状緩和の治療を受ける必要があります。
予防策
ベイリサスカリス感染の予防は、アライグマやその糞便との接触を避けることが最も重要です。アライグマをペットとして飼育したり、餌付けしたりしないでください。庭や公園で砂場や池などアライグマが集まりやすい場所は管理し、ゴミは密閉して保管します。また、アライグマの糞は暗く筒状で非常に悪臭があるため、見分けて接触を避けましょう。
