代謝性ホルトル細胞腺腫症候群
代謝性ホルトル細胞腺腫症候群(Metabolic Hurthle Cell Adenoma, MHCA)は、甲状腺に存在するオンコサイト(ホルトル)細胞が異常増殖し、腺様の良性腫瘍を形成する稀な疾患です。腺腫は腺組織を構成する細胞が増えることでできる腫瘍で、MHCAでは既存の甲状腺構造に腫瘍が付随して成長します。
概要
MHCAは甲状腺腫瘍全体の約3〜10%を占めるとされ、主にホルトル細胞が異常増殖して腫瘍を形成します。別名として「橋本甲状腺炎(Hashimoto thyroiditis)」や「毒性甲状腺炎」と呼ばれることがありますが、実際には良性腫瘍が中心です。稀に悪性化し、遠隔転移を起こすケースも報告されています。
主な特徴
- 両側性(両葉)に発生しやすく、甲状腺内に複数の病変が認められることが多い。
- 腫瘍は触診で触れることがあり、超音波やCTで形態的に確認されます。
- 女性では約2.3%、男性では約0.74%の罹患率と、男女差があります。
原因
MHCAの発症には以下の要因が関与すると考えられています。
- 放射線治療や放射線被曝の既往歴。
- ヨウ素欠乏。
- 甲状腺細胞の増殖を制御する遺伝子の変異や活性化。
症状
主な症状は以下の通りです。
- 喉の前部に触知できる腫瘤感。
- 声がかすれる、または嗄声(しゃがれ声)。
- 咳嗽、喉の赤みや腫脹。
- 嚥下時の違和感や詰まった感覚。
- まれに顔面浮腫や頸部リンパ節の腫脹。
治療法
治療は腫瘍の大きさや悪性度、患者の全身状態に応じて選択されます。
- 外科手術:腫瘍と甲状腺の一部または全摘出が最も一般的です。
- 放射線療法:手術後の残存細胞や転移リスクが高い場合に補助的に行われます。
- 化学療法:悪性転換が疑われるケースで使用されます。
- 甲状腺ホルモン補充:甲状腺全摘出後は、終生にわたりレボチロキシン(Synthroid、Levoxyl など)の投与が必要です。
手術や放射線・化学療法後は、甲状腺機能低下症の管理が重要となります。
