プロトン交換膜(PEM)とは?
プロトン交換膜(PEM)は、イオンマーと呼ばれる特殊高分子シートで、プロトン(H⁺)だけを一方向に透過させる半透過膜です。イオンマーは中性ユニットと帯電ユニットが組み合わさって構成され、温度上昇で粘度が変化します。代表的なイオンマーはデュポン社が所有するフッ素系イオンマー「Nafion」で、PEM燃料電池の製造に広く利用されています。
イオンマーとPEMの関係
イオンマーの半透過性は、主に中性の繰り返し単位と、少数の帯電単位からなる構造に起因します。この構造により、プロトンは膜を通過できる一方で、他のイオンや水素・酸素といったガス分子は遮断されます。イオンマーは、特別な材料をポリマーマトリックスに混入して合成する方法と、純粋なポリマーを加工する方法のいずれかで製造されます。
燃料電池技術におけるPEMの役割
PEMは現在の燃料電池技術の中心部品で、将来的には家庭や産業のエネルギー供給源として期待されています。PEMは電池内部で電子を生成する際に、ガスの逆流を防ぎつつイオンの移動を選択的に制御します。そのため、PEMを採用した燃料電池は「プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)」と呼ばれ、構造は主に4つの部分に分かれます。
PEMFCの4つの主要部品
1. アノード(負極):水素分子が解離し、電子が放出される場所です。
2. カソード(正極):酸素が触媒に供給され、電子と結合して水が生成されます。表面は酸素の拡散を高めるよう加工されています。
3. 触媒:主に白金などの貴金属が使用され、化学反応を促進しますが、直接反応に関与しません。
4. プロトン交換膜:電解質として機能し、プロトンだけを選択的に通過させます。
酸化・還元プロセス
水素ガスはアノード側に供給され、触媒でイオン化されてプロトンと電子に分かれます。放出された電子は外部回路を流れ、電力として利用され、最終的にカソードに戻ります。一方、酸素ガスはカソード側に供給され、触媒で酸化されます。正に帯電した水素イオンはPEMを通過し、カソード側で酸素イオンと結合して水(H₂O)を生成します。
燃料電池の電圧とスタック構成
単一セルの電位は約0.7 Vと低いため、実用的な電圧を得るには複数のセルを直列に積層した「スタック」構成が必要です。セル間は導電プレート(または双極板)で接続され、これらの板は酸化・還元反応が頻繁に起きるため、耐腐食性の高いグラファイトや複合材料で作られます。
