カウンセリング倫理と政治的側面
カウンセリング倫理
2005年に米国カウンセリング協会(ACA)が策定した20ページの倫理規定は、実務上の課題に焦点を当てており、政治的問題を直接扱うものではありません。ACAは、カウンセラーが患者に価値観を押し付けることを避け、機密性を保ち、文化的規範に配慮することを求めています。前文では、カウンセリングの根本的な目的を「人間の発達の促進」と定義し、社会的有用性の向上以外の目的は持たないとしています。
精神疾患の政治性
精神医学者トーマス・サザスは、ACAが倫理規定だけに従っていては事業継続が不可能になると主張します。サザスによれば、カウンセラーという立場自体が社会的価値観を反映した権力関係であり、カウンセラーや精神科医は「正常性」の象徴、患者は「狂気」の象徴と位置付けられます。
カウンセリングの倫理と政治
サザスは「狂気」や「精神障害」という語は単に社会規範を指すだけで実体のない概念だと述べています。カウンセラーは「国家のエージェント」として機能し、社会規範や法令を強化し、刑事司法が対処できないケースでも人々を拘束する根拠を提供します。サザスは、カウンセリングや精神医学は患者の自律性を破壊し、人間の発達を「社会的有用性」の名の下に犠牲にする不道徳な行為だと批判します。
倫理と強制
サザスの主張の核心は、精神保健分野が「人間の尊厳」の名のもとに強制を正当化する唯一の領域であるという点です。独立性という基本的な倫理規範は、社会的統合や法執行のために犠牲にされます。すべての生活領域が精神疾患として医療化され、サザスは米国全体が「異常」と見なされ、管理・薬物治療の対象になるまでこの体制は止まらないと警告しています。曖昧な「生活の質」や「社会的有用性」といった表現は、個人の権利を社会全体の医療的善のために覆い隠す結果となります。
