携帯電話基地局がもたらす健康リスク
概要
携帯電話は、基地局(ベースステーション)から送信される電波で通信を行います。基地局は半径約2.5マイル(約4km)まで無線周波数(RF)電磁波(EMR)を放射します。近年の研究では、低レベルであってもこの電磁波が健康リスクをもたらす可能性が指摘されています。例えば、医師・科学者団体「Responsible Application of Science and Technology」の主張によれば、放射周波数は人間の脳波リズムに近く、脳機能に干渉する恐れがあるとされています。
記憶への影響
Neurotoxicologyに掲載された「携帯電話基地局周辺居住者の神経行動効果」という研究では、RF電磁波に曝露された被験者群のうち28.2%が記憶障害を訴え、短期聴覚記憶と注意力のテストで有意に低い成績を示しました。また、Pathol Biol(パリ)による調査でも、基地局から100m以内に住む男女(計530名)で記憶障害の報告が最も多く確認されています。
神経精神的影響
同じNeurotoxicologyの研究では、RF曝露群の23.5%が頭痛や睡眠障害、21.7%がうつ、18.8%がめまいを経験しました。対照群ではこれらの症状は半分以下でした。Pathol Biolの調査でも、基地局から300m以内に住む人々に疲労、頭痛、睡眠障害、イライラ、うつ、性欲低下などの症状が多く見られ、特に女性は吐き気や食欲不振、視覚障害を訴える割合が高いことが報告されています。米国食品医薬品局(FDA)は、RFが体温上昇と組織損傷を引き起こす可能性があるとし、特に血流が乏しい眼や精巣が影響を受けやすいと指摘しています。
医療機器への干渉
FDAは、電磁波が埋め込み型心臓ペースメーカーや除細動器に干渉するリスクを警告しています。医療機器協会(AAMI)が実施した新たなテストにより、多くの患者でリスクは低減されたものの、患者は携帯電話を体の反対側で使用する、ポケットに入れない、デバイス近くに置かないといった注意が推奨されています。
電磁過敏症(EHS)
世界保健機関(WHO)によれば、電磁過敏症(Electromagnetic Hypersensitivity, EHS)と診断される人々が存在し、軽度の症状から仕事を辞めるほど重度の症状まで幅があります。主な症状は皮膚の赤み、刺すような感覚、倦怠感、集中困難、めまい、吐き気、心拍の乱れ、消化不良などです。報告された症例の約10%が重症とされていますが、現在のところ正式な診断基準は確立されていません。
主要機関の見解
米国がん協会、国際がん研究機関(IARC)、世界保健機関(WHO)、米連邦通信委員会(FCC)などは、現時点での科学的エビデンスは決定的ではなく、基地局からの電磁波が健康に与える影響は「証明されていない」かつ「信号が弱いため影響は極めて低い」としています。FCCは、地上レベルでの曝露は安全基準の数千分の一以下であると報告しています。
