死後のアルコール代謝
化学
アルコールは単純な有機化合物で、エタノール(エチルアルコール)は飲用されると酔いを引き起こします。アルコール飲料にはエタノールが様々な濃度で含まれています。一方、エチレングリコールなどの他のアルコールは毒性が高く、摂取すると重篤な中毒や死に至ります。
摂取されたアルコール
飲酒すると、アルコールは胃を通過し小腸で吸収され、血流に入り脳へ運ばれます。肝臓は血中アルコールの約95%を代謝し、残りは呼気、唾液、尿などで排泄されます。肝臓でアルコールは酸素と反応し、まずアセトアルデヒドに変わり、さらに酢酸へと代謝され、最終的に二酸化炭素と水として体外に排出されます。
細菌による合成
死後、体内の分解過程でエタノールが生成されます。死後すぐに細菌が増殖し、糖(ブドウ糖など)をエタノールに変換します。このエタノールは死体の分解が進むにつれて濃度が上昇し、死亡から数日でリットル当たり最大約1,500 mgに達することがあります。
分布
死後のアルコールは体内で均一に分布しません。組織や体液の水分含有量の違いにより、アルコール濃度に差が生じます。例えば血漿は全血より水分が多く、血漿中のアルコール濃度は全血より10〜15%高くなることがあります。一方、眼球の硝子体はほとんどエタノールを蓄えないため、硝子体液の測定は死前のアルコール状態を推定するのに有用です。
考慮すべき点
事故や事件で死亡した場合、検死官は酩酊が関与したかどうかを慎重に評価する必要があります。死後に生成されたエタノールは飲酒由来と化学構造が同一であるため、血中アルコール濃度だけでは死前に飲酒したかどうかは判断できません。尿中のアルコールも同様に信頼性が低いです。硝子体液の測定は有用ですが、最終的には遺体の体重、年齢、性別、脂肪量、死亡時間など複数の要因を総合的に判断します。
