耳の手術手順と主な疾患別治療法

人間の耳は、聴覚と平衡感覚を司る極めて精巧な構造です。近年のコンピュータ技術と耳外科の進歩により、重度の耳疾患に苦しむ患者にも聴覚回復の選択肢が提供できるようになりました。

胆脂腫・腫瘍

  • 腫瘍は外耳から内耳まで様々な部位に発生し、増大すると中耳や内耳に広がり、平衡感覚や聴覚を失わせます。突然の難聴、激しい耳の痛み、めまいは腫瘍の兆候です。CTやMRIで診断し、腫瘍の位置に応じて外科的除去が行われます。手術リスクには失聴、永久性めまい、顔面神経麻痺があり、放置すれば失聴や死に至ることもあります。

  • 外耳にできる皮膚がんや腫瘍は比較的多く、ほとんどは局所切除で済みますが、症例によっては外耳全体の半分以上を切除することがあります。

  • 胆脂腫は中耳にできる良性増殖物で、増大すると内耳へ侵入し失聴を引き起こします。症状は難聴や悪臭を伴う分泌物です。小さなものは耳道からの簡易手術で除去できますが、広範囲の場合は乳様骨切除術(mastoidectomy)が必要です。手術後はその側の聴力が大幅に低下します。 untreated 胆脂腫は脳へ侵入し致命的になることがあります。

鼓膜穿孔

  • 鼓膜は耳道の奥にある薄い膜で、音を伝える役割を担います。異物の挿入、未治療の感染、頭部外傷などで損傷し、穴が開くことがあります。小さな穿孔は自然に治癒しますが、治らない大きな穿孔は鼓膜形成術(tympanoplasty)で修復します。術式は耳の後ろから皮膚移植片を採取し、新しい鼓膜または大きな穴の補修に用います。成功率は高く、日常的に実施されています。

耳石(カルシウム沈着)

  • 中耳の三つの小骨(耳小骨)は音を増幅しますが、カルシウム沈着や外傷で硬化すると動きが阻害され、急激な難聴が起こります。硬化した小骨や沈着物を除去・置換する手術がステープトミー(stapedectomy)です。近年の技術向上により成功率は上がっていますが、手術リスクとして中耳・内耳の不可逆的損傷、顔面神経麻痺、永久失聴が残ります。

難聴(人工内耳)

  • 先天性または後天性の重度難聴に対し、人工内耳(cochlear implant)が有効です。蝸牛内に電極アレイを挿入し、音情報を直接脳に伝達します。適応は詳細な聴覚・画像検査で判断され、手術後は最低1年の言語・聴覚リハビリが必要です。大手術に伴うリスクやデバイス故障の可能性がありますが、成功すれば生活の質が劇的に向上します。

  • 適応可否はCochlear Americasなどの公式サイトで検索し、近隣のクリニックで相談してください。

聴覚補助装置(補聴器・インプラント)

  • 補聴器は19世紀後半から使用され、現代のデジタル補聴器は高音質で耳道内に目立たず装着できます。2009年以降、部分的な難聴向けに3種類のインプラント型補聴器が登場しました。

  • 耳道インプラントはマイクとプロセッサを外耳の皮膚に固定し、耳道へ音を伝達します。鼓膜穿孔や中耳疾患、頻繁な感染歴がある人には不適です。高周波神経性難聴に適しています。

  • 中耳インプラントはトランスデューサを中耳と内耳の間に配置し、皮下に装置本体を埋め込みます。2000年にFDA承認され、神経性難聴で従来の補聴器に満足できなかった患者に推奨されます。

  • 骨導インプラントは後頭部の骨に装置を固定し、音を骨を通して蝸牛に伝えます。装置は取り外し可能で、バッテリー交換やプログラム変更が容易です。蝸牛機能は正常だが鼓膜や中耳に重度の障害がある人、再発性の耳感染や滲出がある人に適しています。

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