採血(Phlebotomy)について
起源
採血の原型は古代ギリシャで、ヒポクラテスの時代に血液を抜く療法(瀉血)が考案されたとされています。ヘロフィロス、アルカガトス、ガレノスら有名な医師たちが、瀉血は病を治すために必要だと主張しました。当時は月経が健康の象徴と考えられ、体内の余分な「湿気」や「血液」を排出すれば病が治ると信じられていました。
歴史
古代から中世にかけては、皮膚に浅い切り込みを入れ大量に血液を抜く方法が主流でした。4体液説に基づき、体内の液体バランスが崩れると病になると考えられていました。19世紀半ばになると、感染部位の血液を「洗い流す」ことで治癒を図るという考えが広がり、そこから「phlebotomy(採血)」という語が使われ始めました。1901年に瀉血は疑似科学とみなされましたが、血液検査の技術が発展すると、少量の血液サンプルが必要となり、採血は診断手段として復活しました。現在では診断の基本手法として確立されています。
手順と実施方法
現代の採血は厳格な衛生管理のもとで行われます。認定された採血技師が患者を座らせ、滅菌されたラテックス手袋を装着し、採血部位に止血帯を巻きます。通常は肘の内側にある大静脈(正中静脈)から血液を採取し、赤ちゃんの場合は足の指間の静脈が利用されます。技師は皮膚の下にある静脈を探し、アルコール綿で消毒した後、針を刺入します。単一検体の場合はシリンジ、複数検体の場合は真空チューブ(バキュティナー)を使用します。血液が採取されたら、止血帯を外し、針を抜いて圧迫止血し、絆創膏で保護します。
利点
採血がなければ血液検査は実施できず、糖尿病の血糖測定や貧血のヘモグロビン測定、DNA解析など多くの診断が不可能になります。採血技術の進歩により、過去1世紀で数多くの感染症や致命的疾患が早期に発見・治療され、医療の発展に大きく貢献しています。
リスク要因
採血は比較的安全ですが、以下のようなリスクがあります。針刺部位の軽度感染、血腫、まれに血液汚染(敗血症)です。非滅菌器具の使用や針の再利用は絶対に避けなければなりません。また、遺伝性ヘモクロマトーシスの素因がある人は、繰り返しの採血で鉄過剰症が悪化することがあります。適切な手技と衛生管理により、これらのリスクは最小限に抑えられます。
