ERISAの先取特権とは何か?
他人の過失による事故で重傷を負い、加害者に対して訴訟を起こし、慰謝料や損害賠償金を勝ち取ったとします。ところが、健康保険会社から「治療費の支払い分を差し引く」旨の請求を受けたらどうでしょうか。これは「ERISA先取特権(ERISA lien)」と呼ばれる仕組みです。
ERISA(エリサ)とは
ERISA は「Employee Retirement Income Security Act」の略で、1974 年に制定された連邦法です。雇用主が提供する年金や健康保険プランの運営基準を定め、参加者に給付内容の開示や不服申し立て手続きの権利を保障します。また、保険プランが受給権者に不当な拒否をした場合や、受託者義務(fiduciary duty)に違反した場合に訴訟が可能です。さらに、参加者はプランに対して訴訟を起こす権利があります。
代位弁済(サブロゲーション)
先取特権は「代位弁済」の概念に基づきます。代位弁済とは、保険会社が自らの支出を、事故の過失責任者やその保険会社から回収する権利を持つことです。たとえば、相手が赤信号を無視して衝突した場合、被害者の自動車保険が修理費を支払いますが、その費用は加害者に請求されます。
健康保険プランと代位弁済
多くの健康保険プランには代位弁済条項が組み込まれており、保険会社は被保険者が受け取った賠償金から医療費を回収できると規定しています。この権利は ERISA 第 503 条(a)(3) に明記されており、保険会社は「適切な衡平的救済」を求めることで、参加者全体の保険料抑制という受託者義務を果たすことができます。
先取特権(Lien)とは
保険会社が被保険者の判決金や和解金に対して法的な請求権を設定することを「ERISA先取特権」と呼びます。2006 年の最高裁判決により、ERISA の「適切な衡平的救済」条項は保険会社に賠償金への先取特権を認めると解釈されました。ただし、保険会社は被保険者の一般資産(住宅や動産)までは差し押さえることはできません。つまり、和解金から医療費分を差し引くことは可能でも、家や車までは奪えないということです。
