動機付け面接(MI)の5つの基本原則
動機付け面接(Motivational Interviewing、略称MI)は、クライアントが抱える問題に対する葛藤(アンビバレンス)を認識し、分析し、解決へ導くカウンセリング手法です。個人が有害な行動を変える動機を高めることを目的とし、1983年にウィリアム・R・ミラー教授が初めて提唱しました。その後、1991年にスティーブン・ロールニック教授とミラー教授が『Motivational Interviewing』という書籍で、MIの5つの基本原則を体系化しました。
1. ギャップを作る(Generate a Gap)
セッションの冒頭で、クライアントに自分の目標や価値観を語ってもらい、現在の行動や状態を具体的に説明させます。目標と現実の間に「ギャップ」があることを自覚させることで、変化への動機付けを促します。たとえば、モデルになることを目指す過体重のクライアントに、平均的なモデルの体重と自身の体重を比較させ、体重差や減量に要する期間を具体的に質問します。
2. 抵抗に乗る(Roll with Resistance)
クライアントが抵抗感を示したときは、対立せずに別の質問や技法に切り替えます。たとえば、アルコール依存を否定するクライアントに対しては、まずアルコール依存者が1日に飲む平均本数を尋ね、続いて本人の実際の飲酒量を確認することで、抵抗を自然に和らげます。
3. 議論を避ける(Avoid Arguing)
クライアントにレッテル貼りや批判的な指摘は行わず、対立的な態度は排除します。MIでは対話を通じてクライアントの自己認識を深めることが重要です。
4. できると信じさせる(Can‑Do)
カウンセラーはクライアントが変化可能であると実感できるよう支援します。成功体験を示す映像や同様の課題を克服した人物のエピソードを提供し、変化への自信を育てます。もしクライアントが「変えられない」と感じた場合は、その根拠や障壁を丁寧に探り、具体的な対策を共に考えます。
5. 共感を示す(Express Empathy)
カウンセラーはクライアントが安心して本音を語れる雰囲気を作ります。反射的傾聴や要約・確認を通じて、相手の言葉を正確に受け止め、無条件の肯定的関心と尊敬の姿勢を示すことが重要です。相手を受容すればするほど、変化への意欲は高まります。
以上の5つの原則は、MIを実践する際の指針となりますが、個々のケースに応じた柔軟な対応が求められます。実際のカウンセリングでは、MI認定を受けた専門家の指導を受けることが望ましいでしょう。
