なぜ塩素は飲料水やプールの水に添加されるのか?
塩素は地球上に存在する92種類の自然元素の中でも最も豊富なものの一つです。非常に反応性が高く、他の元素と簡単に結合して様々な化合物を作ります。科学者は塩素の豊富さと高い反応性を利用し、数千もの用途を持つ塩素含有化学物質を開発しました。その中でも重要な用途の一つが、病原体などの病原微生物を殺すことです。
歴史
塩素は1774年にカール・ウィリアム・シーレによって発見されました。当時は病気の原因や感染経路がまだ分かっていませんでした。1854年にジョン・スノウ医師がコレラが水を介して伝染することを示し、病原体と水の関係が明らかになりましたが、原因は不明のままでした。1870年代にルイ・パスツールとロベルト・コッホが細菌説(病原体説)を提唱し、1881年にロベルト・コッホが塩素が細菌を死滅させることを実証しました。
病原体と水
水媒介性疾患とは、水が感染経路となる病気のことです。コレラ、腸チフス、赤痢などが代表例です。汚染された水にごく少量の塩素を加えるだけで、細菌やその他の微生物は速やかに死滅します。塩素はまず病原体の細胞壁や膜を破壊し、続いて細胞内の酵素や増殖に必要な構造を無効化します。
飲料水
飲料水は人や動物の糞便と接触することで微生物に汚染されます。わずかな接触でも感染の原因となります。洪水、浄化槽の漏出、埋立地からの浸出水、下水管などが汚染源です。1905年に飲料水の消毒に塩素が使われ始めてから、水媒介性疾患による死亡者は大幅に減少しました。しかし、特に途上国の子どもたちにとって安全な飲料水の確保は依然として大きな課題です。
プールの水
飲料水と同様に、処理されていないプールの水も感染源となります。主な汚染源は人や動物の糞便で、泳いでいる人の排泄物や皮膚の剥がれ、唾液、粘液なども含まれます。鳥やげっ歯類の糞も混入することがあります。適切に塩素処理されたプールの水は、病原体を死滅させ、感染拡大を防ぎます。
塩素使用の利点と欠点
塩素は入手しやすく、低コストで、ほとんどの微生物を殺す能力があります。水に容易に溶け、固体・液体・気体の形態で利用できる点も便利です。また、塩素は残留効果があり、処理後も水道管内で病原体を抑制し続けます。一方で、残留塩素は水に独特の味や臭いを付け、飲料としての感覚を損なうことがあります。さらに、塩素は有毒で取り扱いに注意が必要です。
