ADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断と治療

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、過度の多動性・不注意・衝動性が顕著に現れる行動障害です。現在の医学では血液検査などの客観的検査はなく、医師やメンタルヘルス専門家が患者や家族から得た情報を総合的に評価して診断します。以下では、ADHDの評価・診断・治療の主なポイントを解説します。

評価

医師はまず全身的な身体検査を行い、他の疾患が症状に影響していないか確認します。甲状腺機能低下症、うつ病、聴覚障害、不安障害、睡眠障害、学習障害などが類似の行動を引き起こすことがあります。また、離婚・転居・家族の死など急激な生活変化も行動に影響を与えるため、患者本人と家族へのインタビューで日常の行動・気分・学業・仕事の状況を詳しく聴取します。

評価尺度(Rating Scales)

公式な診断に必須ではありませんが、ほとんどの医療従事者が以下のような行動評価尺度を併用します。

  • Conner's Adult ADHD Rating Scales(CAARS)― 18歳以上の成人用
  • Vanderbilt ADHD Diagnostic Parent Rating Scale(VADPRS)― 保護者が記入する幼児・小児用
  • Vanderbilt ADHD Diagnostic Teacher Rating Scale(VADTRS)― 教師が記入する幼児・小児用
  • Behavior Assessment System for Children(BASC)― 多面的に多動性・不安・攻撃性・抑うつを評価

診断基準

米国精神医学会(APA)が定める DSM-5 の基準に基づき、以下の条件を満たす場合に ADHD と診断されます。

  • 6か月以上にわたり、症状が一定以上の頻度で出現していること
  • 7歳以前に症状が出現していること(成人期に初めて現れる障害ではない)
  • 症状が家庭と学校(または職場)など、複数の環境で観察されること

主な症状

子どもの場合、絶えず体を動かしたがり、座っていられない、指示を聞かない、外部刺激にすぐ注意が逸れる、といった特徴があります。課題や宿題に集中できず、始めても続けられないことが多いです。成人になると、遅刻や忘れ物が頻繁になる、整理整頓が苦手、衝動的な買い物やギャンブル、職場でのトラブル、人間関係の摩擦、自己評価の低さなどが見られます。

薬物療法

ADHD の第一選択は刺激薬(メチルフェニデートやアンフェタミン系)です。刺激薬は逆説的に過活動を抑え、集中力を高める効果があります。製剤は長時間作用型(拡張放出・長時間作用)と短時間作用型があり、長時間作用型は1日1回、短時間作用型は必要に応じて1日数回服用します。主な副作用は頭痛、食欲不振、不眠、イライラなどです。

薬以外の治療

薬物療法に加えて、以下の心理社会的アプローチが有効です。

  • 認知行動療法(CBT)― 18歳未満の子どもに対し、望ましい行動を報酬で強化し、望ましくない行動を抑制する手法
  • ソーシャルスキルトレーニング ― 他者の合図や表情を読み取り、適切に応答する技術を学ぶ
  • ADHD コーチング・ライフコーチング ― 目標設定や時間管理、組織化のスキルを身につけ、日常生活の質を向上させる

これらの治療は薬物と併用することで、症状の軽減と社会的機能の向上を目指します。

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