マルチストア記憶モデルの課題と批判

アトキンソンとシフリンのモデル

1968年、リチャード・アトキンソンとリチャード・シフリンは「マルチストア記憶モデル」を提唱しました。感覚記憶、短期記憶(作業記憶)、長期記憶の3つのストアを想定しています。感覚記憶は視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚から得られる情報を一時的に保持し、注意が向けられない限り1〜2秒で消失します。短期記憶は約15〜30秒保持され、情報は他の処理へ転送されます。長期記憶への符号化は主に視覚的または意味的で、画像や意味として保存され、容量の上限は知られていません。

過度な単純化

多くの研究者は本モデルが過度に単純化されていると指摘します。短期記憶は視覚空間系や中央実行系など複数の構成要素から成り、長期記憶も意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶といったカテゴリーに分けられます。

リハーサルの位置付け

アトキンソンとシフリンはリハーサル(反復練習)が長期記憶形成に重要だとしましたが、全ての長期記憶に必須ではありません。クレイグとタルヴィングは、情報処理の深さが記憶保持においてリハーサルよりも重要であると提案しています。深く処理された情報は長期記憶に残りやすくなります。

線形構造への批判

本モデルは感覚→短期→長期という線形な流れを前提としていますが、脳損傷患者の研究は記憶がより複雑であることを示しています。長期記憶や短期記憶の一部が失われても他は残るケースがあり、記憶は脳内で分散した複数の領域に格納されていると考えられます。

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