ベックうつ病評価尺度(BDI)について
機能
ベックうつ病評価尺度(BDI)は、臨床的うつ症状の有無と重症度を評価する質問紙です。もともとは精神科施設の患者を対象としていましたが、現在では一次医療でも短縮版が用いられ、うつ患者の測定や経過観察に利用されています。医療従事者が実施することもありますが、紙ベースで患者自身が記入する形が一般的です。
歴史
BDIは1961年に認知療法の第一人者であるアーロン・T・ベック博士(現在ベック認知療法研究所所長)によって開発されました。当初は21項目からなり、各項目は4段階評価でうつ症状の重症度を測定しました。質問文は患者自身が使用する言葉を基に作成され、ベック博士は自らの患者や同僚・学生の患者から症状表現を収集して作成しました。
種類
開発以来、BDIは数度の改訂を経ています。最初の大きな改訂は1971年のBDI‑IAで、15項目の文言を変更し、同一症状に対する代替語を削減しました。1978年に著作権が取得され、長らく標準版として使用されました。1996年には大幅改訂が行われBDI‑IIが登場し、診断・統計マニュアル第4版(DSM‑IV)に合わせて、焦燥、集中力低下、無価値感、日常生活機能障害などの項目が追加されました。一方、体重減少や身体イメージ、身体的こだわりに関する項目は削除されました。
意義
BDIは、患者自身が語る症状記述を基にうつの有無と重症度を測定した初の診断尺度です。うつ患者を対象にした信頼性検証が多数行われ、開発当初から現在に至るまで高い精度と有用性が維持されています。
理論的背景
ベックがBDIを開発した当時は、うつは自己に対する敵意の表れとする精神分析的理論が主流でした。しかしベックは、うつ患者が現在の経験、将来、自己に対して持つ否定的な認知(ネガティブ・トライアド)に注目し、質問項目はこの認知様式を反映しています。
