蔗糖は茎の下部へ移動できないのはなぜか?
蔗糖は植物が輸送する主な糖です。光合成で葉で作られた蔗糖は、根や成長中の種子など他の部位へエネルギー源として運ばれます。蔗糖は植物全体に張り巡らされた篩部(しぶ)という特殊組織を通って輸送されます。
拡散だけでは下方へ移動できない理由
葉の中の蔗糖濃度は茎よりも高いため、単純な拡散では茎の下部へ移動しません。拡散は「高濃度→低濃度」へ分子が自然に移動する現象です。もし拡散で下方へ移動させるなら、葉の蔗糖濃度が茎より低くなる必要がありますが、実際には逆です。
能動輸送による下方移動
蔗糖は能動輸送によって茎の下方へ運ばれます。能動輸送は「低濃度→高濃度」へ分子を押し上げる過程で、ATP(アデノシン三リン酸)から供給されるエネルギーが必要です。
プロトン勾配がエネルギー源
篩部細胞の外側にプロトン(H⁺)を汲み上げることで、細胞外に高いプロトン濃度が作られます。このプロトン勾配がエネルギーとなり、蔗糖を篩部細胞内へ取り込む能動輸送を駆動します。
質量流(マスフロー)での輸送
蔗糖が篩部細胞に取り込まれると、圧力勾配が生じます。圧力勾配は篩部内の液体を高圧側から低圧側へと流動させ、結果として蔗糖溶液は茎の下部へと移動します。これが「質量流」と呼ばれる現象です。
