アスリートが安静時に低い心拍数を示す理由とその意味
定期的なトレーニングは心筋を肥大させ、1回の拍動でより多くの血液を送り出せるようになります。その結果、一般的な安静時心拍数(60〜100 bpm)よりかなり低く、40 bpm 前後になるアスリートも少なくありません。
安静時心拍数(RHR)は、座っているか横になっている状態で測る 1 分間あたりの拍動回数です。低い RHR は心臓が効率的に働いている証拠とされますが、症状を伴う極端な低下は何らかの疾患を示すことがあります。
運動が安静時心拍数を下げる仕組み
運動中、心臓は酸素を多く含んだ血液を働く筋肉へ送ります。繰り返しの運動により心筋が厚くなり、1 回の拍動で排出される血液量(駆出量)が増大します。1 回で多くの血液を運べるようになると、安静時には心拍数を下げても十分な血流が保てます。
2018 年の心血管研究レビューでは、全ての定期的な運動が RHR を低下させ、特にランニング、サイクリング、スイミング、ヨガなどの持久系トレーニングが顕著な効果を示すと報告されています。
安静時心拍数に影響を与える要因
- 年齢 – 年を取るにつれて RHR は上昇傾向にあります。
- フィットネスレベル – 高い体力を持つ人ほど RHR は低くなります。
- 運動の種類・強度・時間 – 持久系トレーニングが最も効果的です。
- 環境温度 – 暑い・湿度の高い環境では心拍数が上がります。
- 精神状態 – ストレスや不安、興奮は心拍数を上昇させます。
- 薬剤 – βブロッカーは心拍数を下げ、甲状腺薬の一部は上昇させます。
心拍数が低すぎるときのサイン
多くのアスリートにとって低い RHR は問題ありませんが、めまい、倦怠感、失神、胸の違和感、息切れといった症状がある場合は注意が必要です。これらは 60 bpm 未満の拍動が続き、十分な血流が確保できなくなる「徐脈(bradycardia)」を示す可能性があります。
上記の症状を感じたら、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて心臓専門医への紹介を受けましょう。
アスレチックハート症候群(AHS)
AHS は長期にわたる高強度トレーニングにより左心室がやや拡大し、壁が厚くなる良性の適応変化です。心電図に変化が見られることがありますが、通常は健康に支障をきたしません。ただし、真の心疾患と区別がつきにくいケースもあるため、以下の症状がある場合は医師に報告してください。
- 頻繁な胸痛
- 不整脈
- 運動中の失神エピソード
まれに、AHS ではなく先天性心疾患が原因で倒れることがあります。
心拍数の測定と管理
自宅で安静時心拍数を測る最適なタイミングは、朝起きた直後です。
- 人差し指と中指の先端を、親指のすぐ下の手首側面に当てます。
- 60 秒間の拍動数をカウントします。
最大心拍数(MHR)は激しい運動中に心臓が維持できる最高の拍動数で、一般的な目安は「220 − 年齢」です。たとえば 35 歳の場合、MHR は約 185 bpm となります。
目標心拍数ゾーンは MHR のパーセンテージで表します。
- 中強度: MHR の 50 %〜70 %
- 高強度: MHR の 70 %〜85 %
心拍数モニターを使えば、これらのゾーン内でトレーニングできているか確認できます。計算上の MHR を超えて長時間トレーニングすると危険です。めまいや息苦しさを感じたらすぐに運動を中止してください。
まとめ
トレーニングにより心肺機能が向上したアスリートは、安静時心拍数が 40 bpm 前後になることがあります。低い RHR は高いフィットネスレベルの証拠ですが、徐脈や他の心疾患を示すサインが出た場合は速やかに医療機関でチェックしましょう。安全で効果的なトレーニングを続けるために、定期的な心拍数の確認と適切な医師の受診が重要です。
