ホルモン補充療法が気分変動に与える役割
ホルモンと脳
ホルモンと神経伝達物質は脳内の同じ経路を通り、一部の受容体部位も共有しています。これらの経路や受容体は感情に関わる脳領域に位置しており、ホルモンが気分に影響を与える可能性が示唆されています。特にエストロゲンとプロゲステロンは、行動や気分に影響を及ぼすことが2008年のカナダ医師会の研究で報告されています。
生殖期の女性
生殖期の女性は、妊娠や出産に伴うホルモン変動に対して感受性が高く、気分の揺れやうつ症状が起こりやすいとされています。産後うつや月経前症候群(PMS)もその一例です。症状が周期的に現れる場合、低用量のホルモン(経口避妊薬など)が処方されることがあります。
閉経前期(ペリメノポーズ)
2000年に米国国立衛生研究所が発表した研究では、ペリメノポーズ期の女性が気分障害を抱える場合、エストロゲン療法が抗うつ薬と同等の効果を示したと報告されています。参加者は「より満足感が増し、悲しみやイライラが減少した」と回答しました。研究者は、ホルモンレベルの低下を補正するというよりも、ホルモン活動を安定させたことが改善につながったと考えています。
閉経期
閉経期の女性も気分変動を訴えることが多く、これはエストロゲンが低下しつつも一定になることに起因すると考えられています。ホルモン補充療法(HRT)は、一部の女性で気分改善に効果が認められています。
ホルモン補充療法の治療的側面
これまでの研究は、ホルモン補充療法が気分変動に対して概ね有益であることを示していますが、長期的な安全性については未解明の点が残ります。短期的には安全性が確認されていますが、心血管疾患やがんとの関連が指摘される研究もあります。したがって、ホルモン関連の気分障害が疑われる場合、現在は抗うつ薬が第一選択となることが一般的です。
