ケベック州の公的健康保険制度
概要
ケベック州政府はすべての住民に包括的な医療サービスを提供しています。1971年に全住民対象のユニバーサル医療保険が導入され、運営は州保健省(Régie d'Assurance Maladie du Québec、RAMQ)が担当し、資金はカナダ連邦政府からの拠出で賄われています。所得に関係なく基本的な医療カバーが保証され、年金受給者や生活保護受給者には処方薬の補助制度が設けられています。
歴史
ケベックの医療制度は「静かな革命」(Quiet Revolution)と自由党の社会福祉拡充政策の産物です。1960年にジャン・レサージ首相が選出され、カトリック教会が長年担っていた診療所・病院・学校の運営を州が引き継ぎました。1964年に教育省が設置され、1971年にユニバーサル医療保険が実施され、州の存在感が日常生活に浸透し、社会民主主義が政治的勢力を得ました。
当初は診断と救急の基本的な医療のみが対象でしたが、以降、社会連帯省の創設や高齢者・低所得者への処方薬補助などでカバー範囲が拡大しています。
医療給付の仕組み
RAMQは「全住民にユニバーサル医療を提供」する方針のもと、診療を受ける際はまず一般医(プライマリケア医)から紹介状を取得する必要があります。紹介状があれば、超音波検査、心電図、X線、MRI・CTスキャンなどが全額カバーされます。また、専門医が必要と判断した手術や麻酔も州が負担します。家庭医がいない場合は、州営の地域診療所に所属する医師から紹介を受けられます。
社会連帯省の福祉プログラム
社会連帯省は生活保護受給者や低所得者向けに追加の医療給付を行っています。対象者は処方薬が無料になるほか、歯科検診や口腔外科手術、眼科検診、眼鏡の一部補助を受けられます。
誤解と実情
公的保険だけではカバーされないサービス(美容整形や多くの歯科治療など)に備えて、民間の保険会社が引き続き商品を提供しています。美容整形は医師の診断書で「医学的に必要」と認められた場合にのみ公的保険が適用されます。雇用者向けの成人の歯科治療は原則カバー外ですが、腫瘍や嚢胞の除去といった口腔外科手術は対象です。
他州からの訪問者は、ケベック州の健康保険カード(RAMQカード)に切り替える必要はありません。医療費は居住州に請求されますが、RAMQカードを取得するにはケベックに3か月以上居住することが条件です。
将来像と課題
近年、財政赤字の拡大に伴いRAMQ制度の持続可能性が懸念されています。ケベック政府は制度の一部民営化や利用者負担金・自己負担額の導入を検討しており、2010年には医師診察ごとに25カナダドルの受診料や年一回の医療税の導入案が議論されました。
