高齢期の認知症について

認知症とは、認知機能が徐々に低下し、思考・記憶・判断力などが衰える状態を指します。症状が進行すると、日常生活の自立が困難になり、本人が自分の身の回りのことさえ管理できなくなることがあります。認知症は高齢者に多く見られますが、老化そのものが原因ではなく、さまざまな基礎疾患が関与しています。

認知症の代表的なタイプ:アルツハイマー病

アルツハイマー病は最も一般的で、初期に発症しやすい認知症です。アルツハイマー協会によると、約530万人が罹患しており、死亡原因の第7位となっています。主な初期症状は短期記憶の喪失で、続いて新しい情報の取得・処理が困難になります。病状が進行すると、長期記憶の障害や身体的・精神的な機能低下が顕著になり、家族や友人の顔すら認識できなくなることがあります。年齢が上がるほど発症リスクは高まり、65歳で約1/50、85歳で約1/2とされています。

認知症のスクリーニング

認知症のスクリーニングでは、失語症(言語理解・表出の障害)、失行症(熟練動作の遂行障害)、失認症(感覚による物体認識障害)、実行機能障害(思考転換や意思伝達の困難)などの症状を観察します。具体的には、言葉が出にくい、語彙を置き換える、話が途切れるといった言語障害や、身だしなみや食事動作がうまくできないといった失行、日常的な物の認識ができないといった失認、計画や判断が困難になる実行機能障害をチェックします。

医療的治療法

認知症治療は、可逆的なダメージの修復と不可逆的要因の進行抑制を目的とします。コリンエステラーゼ阻害薬は、神経伝達物質の分解を抑え、脳内のアセチルコリン濃度を高めることで認知機能の低下を遅らせます。これにより患者の安定化や認知機能の改善が期待できます。

治療上の留意点

高齢者は心疾患、高脂血症、糖尿病など複数の基礎疾患で薬剤を常用していることが多く、これらの薬が認知症の発症リスクを高める可能性があります。現在、認知症そのものを根本的に除去する外科手術は存在しませんが、脳腫瘍や嚢胞、過剰な脳脊髄液の排除など、認知症症状を助長する基礎疾患の外科的処置は有効です。

予防策

バランスの取れた食事、定期的な運動、適度なアルコール摂取といった心身の健康を保つ生活習慣は、いくつかの認知症リスクを低減させます。また、ヘルメットやシートベルトの使用は頭部外傷を防ぎ、脳の保護につながります。ただし、不可逆的な認知症を完全に防止する確実な方法は現時点では確認されていません。

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