病的嘘つきの定義と特徴
人はさまざまな理由で嘘をつきます。成功したように見せたい、恥ずかしい状況を隠したい、他者に受け入れられたい、といった動機があります。中には幼少期からの習慣としてストレス軽減のために嘘をつく人もいます。医学的研究は、病的嘘つきは脳構造に特徴的な違いがあり、嘘をつく頻度が高くなることを示しています。
事実
嘘には大きく2種類あります。病的嘘は他者を操作し自分の思い通りにするための嘘で、他人の感情や道徳を顧みません。多くは他の精神障害と併存します。一方、強迫的嘘は習慣的・慢性的に嘘をつくことで、特に目的はなく単に習慣です。どちらも幼少期に始まると考えられています。
特徴
2007年にBritish Journal of Psychiatryに掲載されたYangらの研究によれば、病的嘘つきの前頭前皮質に構造的差異が見られました。この領域は道徳・正直さ・罪悪感を司ります。病的嘘つきでは白質が増加し、灰白質が減少していることが報告されています。白質の増加は脳活動の亢進、灰白質の減少は道徳的制御の低下と関連すると考えられます。
診断
病的嘘つきは真実と虚構を混同し、構造化インタビューでは回答が一貫しません。自らの嘘を事実と信じ込むこともあり、知能が高く操作的で自己中心的な傾向があります。嘘が妄想に至るケースも報告されていますが、本人が嘘を制御できるかは不明です。
留意点
病的嘘と強迫的・習慣的嘘の違いについては文献間で意見が分かれます。多くの定義ではほぼ同一に扱われており、脳構造の違い、あるいは臨床的差異が唯一の区別点と考えられます。
将来展望
脳機能による病的嘘つきの識別は、司法で証言の信頼性評価や、誠実さが求められる職種の採用選考に有用です。将来的には構造的差異を是正する薬剤開発や、薬物療法・心理療法の組み合わせによる治療法の確立が期待されています。
