うつ病に対する認知行動療法の理論
認知行動療法(CBT)は、抗うつ薬と併用したり単独で用いたりする心理療法です。特に生物学的要因だけでないうつ病に対して高い効果が報告されています。CBTでは、うつ病患者が抱える思考パターンを分析し、否定的な認知を修正することで症状の改善を目指します。
認知
認知心理学は、行動主義への反論として、行動よりも人間の思考や感情を重視します。うつ病においては、認知行動療法士が患者のうつ状態中に現れる思考と、それがどのように症状に結びつくかを検討します。
否定的思考
うつ病患者は、自己価値の低下や失敗感、将来への悲観といった否定的な考えにとらわれやすくなります。たとえば、恋人との別れで「自分は良いデート相手ではない」「もう幸せな関係は築けない」と考えることがあります。これらの思考は、肯定的な認知へ置き換えることで対抗できます。
情報処理バイアス
うつ状態の人は、出来事を極端に黒白で捉え、悪い出来事に過度に焦点を当て、良い出来事は一時的なものとして無視しがちです。その結果、生活全体が「決して良くならない」という絶望感に支配されます。
自己効力感の欠如
一般的に人は成功は自分の努力、失敗は外部要因と認識しがちですが、うつ病患者は逆に、失敗は自分のせい、成功は偶然の産物と考えます。さらに、何事にも自分のコントロールが及ばないと感じることがあります。
習得性無力感
マーティン・セリグマンの1965年の実験では、犬が電撃回避のためにフェンスを跳び越えることを学んだ後、フェンスが取り除かれると抵抗せずに電撃を受け続けました。この結果は、逃げ場を失った個体が無力感を覚えることを示しています。例えば、仕事を唯一の収入源と考えていた人が失業した場合、「もう収入は得られない」と感じてしまうことがあります。
まとめ
認知行動療法は、うつ病患者の否定的思考や情報処理の歪み、自己効力感の低下、習得性無力感といった認知的側面に働きかけ、症状の改善を促します。
