吃音(st音)に関する理論

歴史的理論

吃音に関する理論は古代ギリシャにまでさかのぼります。ヒポクラテスは舌の乾燥が原因とし、ハーブ療法や手術を提案しました。19世紀には口腔の解剖学的欠損が原因と考えられ、手術が主な治療法とされましたが、効果が乏しかったため、20世紀に入ると心理的要因が提唱されました。オペラント条件付けや精神分析が試みられましたが、いずれも1960年代に効果が不十分として放棄されました。

遺伝的要因

1930年代に言語病理学の創始者ロバート・ウェストは、吃音が強い遺伝的要素を持つことを観察しました。その後の双子研究でも同様の結果が得られています。1998年の米国小児科学会の報告では、一卵性双生児の77%が兄弟も吃音であるのに対し、二卵性双生児は33%でした。また、吃音者の第一度親族(親、子、兄弟姉妹)は一般人口の3倍以上の確率で吃音を示します。

機能分解仮説

ある仮説では、吃音は脳の言語中枢または聴覚処理系の機能低下が原因とされています。通常、言語中枢は左半球に位置しますが、吃音児の脳画像では右半球の過活動が見られます。右半球が音声生成に十分に発達していない場合、脳は左半球のリソースにアクセスしようと再編成し、結果として吃音が生じます。別の仮説では、聴覚処理に僅かな遅延があり、自己の発話がエコーのように聞こえて集中が乱れ、タイミングが崩れることで吃音が起こるとしています。

要求‑能力モデル

要求‑能力モデルは、子どもの有機的な発話能力と、コミュニケーションに対して課される要求との不一致が吃音を引き起こすと説明します。能力は、音声を迅速に連続して生成するための運動技能、反応時間、順序的動作の計画・実行能力、語彙や語検索能力などを含みます。要求は内部(コミュニケーション欲求や感情状態)または外部(会話の速さや質問へのプレッシャー)に分けられます。通常は能力と要求は同時に発達しますが、吃音の子どもは要求が能力を上回る状況に直面しています。

子供の健康 - 関連記事