異種移植(ゼノトランスプラント)とは?

定義

『Dictionary of Cell and Molecular Biology』によると、異種(xenogeneic)は文字通り「異なる遺伝的系統」を意味し、別種の動物から採取した細胞・組織・臓器を他種の個体に移植することを指します。供給側と受容側の構造・生理的特徴が類似しているほど、成功率は高まります。

歴史

1960年代にさかのぼり、異種移植の研究は始まりましたが、成功例は限られています。現在、牛由来のホルモンや甲状腺抽出物、豚の心臓弁膜などは日常的に利用されていますが、完全な臓器移植は実現していません。特に有名なのは、1984年に新生児がヒトザルの心臓を移植され、20日間生存したケースや、1993年にヒトザルの骨髄と腎臓を受けた患者がわずか3週間で亡くなった事例です。

利点

米国保健福祉省のデータによれば、毎日約17人が臓器提供待ちで死亡しています。臓器提供者の不足は深刻で、死亡原因すべてが臓器提供に適しているわけではありません。異種移植が実用化すれば、移植待機中の一時的な代替手段として、多くの命を救える可能性があります。また、豚の心臓弁膜が人の欠損弁膜を代替し、現在も多くの患者がその恩恵を受けています。

倫理的課題

動物実験全般と同様に、異種移植にも倫理的・道徳的な反対意見があります。動物権利団体は、動物は自らの臓器提供に同意できず、命を奪われることへの懸念を表明しています。また、過剰な実験が多数の動物に苦痛や早死をもたらす点や、実際の進展が乏しい点も問題視されています。宗教的観点からも反対する立場が存在します。

注意点・課題

最も大きな壁は免疫拒絶です。ヒトと他種動物の免疫系は異物を排除しようとするため、移植組織は速やかに排除されます。免疫抑制薬である程度抑えられますが、感染リスクが高まるため長期的解決策とは言えません。さらに、種間感染(ゼノゾノーシス)という、動物から人へ病原体が伝播するリスクも懸念されています。

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