大うつ病(MDD)は誰が最初に定義したのか?
歴史
古代ギリシア時代から、人はうつ状態を理解しようとしてきました。ヒポクラテスは『アフォリズム』で「長く続く恐怖や落胆」をメランコリアの特徴と述べました。
中世まで「メランコリア(黒胆汁)」という呼称が一般的でした。20世紀初頭、ドイツの精神科医エミール・クラペリンは様々なメランコリアを「抑うつ状態」と呼び、病名の概念を整理しました。「depression」という語はラテン語deprimere(押し下げる)に由来します。
DSM(診断統計マニュアル)
米国精神医学会が発行する DSM は精神障害の診断基準をまとめた百科事典です。1952 年に初版が出され、以降 5 回改訂されましたが、最初の 2 版(DSM‑I、DSM‑II)には大うつ病(MDD)は含まれていませんでした。
DSM の課題
DSM‑II の改訂委員長ロバート・スプリッツァーは、当時の DSM が「臨床的特徴を一般的かつ曖昧にしか記述していなかった」ことを指摘しました。
その後、研究診断基準(Research and Diagnostic Criteria, RDC)を作成し、これが DSM‑III に大きく取り入れられ、MDD の診断基準が明確化されました。
MDD の定義
2005 年の論文『Classification of Depression: Research and Diagnostic Criteria: DSM‑IV and ICD‑10』で、アラン・グルーンベルクらは DSM‑III が「大うつ病エピソード」を具体的な基準で定義し、うつ病と双極性障害を明確に区別したことを説明しています。
現在の MDD の診断基準(DSM‑IV)
最新の DSM(当記事執筆時点では DSM‑IV)では、MDD の診断には 9 項目のうち最低 5 項目が 2 週間以上続くことが必要です。主な症状は以下の通りです。
- ほとんどの日にわたり、悲しみや空虚感が続く
- ほとんどすべての活動への興味・関心の喪失
- 睡眠過多または不眠
- 思考や意思決定の困難
MDD の今後の展開
臨床・学術コミュニティは現在も DSM の抑うつ基準を再検討しています。遺伝的要因の解明が進むにつれ、診断基準の見直しや細分化が求められる可能性があります。
