DMSO(ジメチルスルホキシド)による疼痛治療
歴史
ロシアの化学者サイツェフが1866年に初めてジメチルスルホキシド(DMSO)を合成しました。1950〜60年代には、木材加工の副産物として樹脂、染料、塗料、農薬、合成繊維の製造における溶媒改良に利用されました。英国の研究者は、血液細胞の保存冷却剤としてDMSOを使用し、これがハーバード大学のスタンリー・ジェイコブ博士の関心を引きました。ジェイコブ博士は、臓器移植を容易にする保存剤を探していた際に、DMSOが皮膚を通過しやすく組織に害を与えないことを発見しました。DMSOの治療効果としては、鎮痛、抗炎症、瘢痕組織の軟化、活性酸素による細胞障害の防止、血行促進が挙げられます。1970年代、米国食品医薬品局(FDA)は、犬や馬の筋骨格系疾患治療薬としてDMSOを承認し、ヒトでは間質性膀胱炎(痛みを伴う膀胱炎)の治療に使用できると認可しました。
高用量の動物実験で眼球水晶体に障害が見られたことや、1980年代にカリフォルニア州リバーサイドでDMSO使用が疑われた死亡事件が報道されたことから、DMSOは「疑似医薬品」としてのイメージがつきました。米国では健康食品店で販売される場合、工業用溶剤としてラベル付けされ、OTC医薬品としての販売は認められていません。
DMSOの代謝産物であるメチルスルホニルメタン(MSM)は、硫黄の有機形態で、DMSOと同様の治癒効果を持ちつつ副作用が少ないとされています。両者は蓄積性があり、効果が現れるまで数日から数週間かかることがあります(治療部位や損傷の程度による)。
副作用
DMSOを使用すると、呼吸や体臭がにんにくのような匂いを帯び、数日間続くことがあります。皮膚に塗布した場合、一時的な刺激や発疹が起こることもあります。また、肝機能検査の結果に偽陽性を生じさせることがあります。MSMは軽いアスピリン様作用を示し、血液凝固時間を短縮するため、他の抗凝固薬と併用する際は注意が必要です。
主な使用法
外用のDMSOや経口のMSMは、スポーツや反復使用による局所的な疼痛、腫脹、可動域低下の改善に用いられます。30年以上にわたり、関節炎の緩和薬としても広く利用されてきました。2004年のカナダの研究では、DMSOを併用した他の抗炎症薬の関節内投与が、変形性膝関節症の疼痛軽減に有効であることが示されています。
