L-アルギニンの治療効果と安全性
L-アルギニンは市販の栄養補助食品で、体内で一酸化窒素(NO)を生成するアミノ酸です。NOは血管を拡張させ血流を改善し、インスリンや成長ホルモンなどの分泌を刺激します。多数の研究が行われていますが、疾患別の有効性は一様ではありません。
心血管疾患
慢性心不全の標準治療にL-アルギンを加えると、余分な体液の排泄が促進されることがありますが、生活の質や運動耐容能の改善は必ずしも見られません。狭心症患者では、症状の軽減や硝酸薬の効果向上が報告されていますが、疾患そのものの進行抑制は確認されていません。2006年のJAMA研究では、心筋梗塞後の血管硬化に対する効果が認められず、L-アルギン投与群で8.6%が死亡したため試験は中止されました。急性心筋梗塞後の使用は推奨されません。
性機能障害
1日5gの投与は男性の勃起不全に有効とする報告がありますが、1999年の低用量臨床試験ではプラセボとの差が認められませんでした。女性の性機能障害に対する有効性は十分なエビデンスがありません。
糖尿病
2001年の研究では、痩せ型2型糖尿病患者が1日9gのL-アルギンを1か月間摂取すると、インスリン感受性が改善し収縮期血圧が低下しました。ヘモグロビンA1cや体重、拡張期血圧、血清カリウム、心拍数には変化がありませんでした。2006年の研究では、1日8.3gの投与が低カロリーダイエットと運動療法の効果を増強しました。足への局所塗布は血行改善に寄与し、潰瘍予防に役立つ可能性がありますが、潰瘍近傍への皮下注射は治癒時間や切断リスクの改善にはつながりませんでした。
創傷治癒
手術前後にL-アルギンをエイコサペンタエン酸(EPA)やリボ核酸(RNA)と併用すると、回復期間の短縮、感染予防、創傷治癒の促進が報告されています。HIV陰性結核患者では、痰の培養転帰改善、体重増加、咳嗽など症状の早期軽減が認められましたが、HIV陽性患者では同様の効果は見られませんでした。骨折、熱傷、腱、消化管の治癒にも有益とされています。
HIV・エイズ
2000年の研究で、L-アルギンをヒドロキシメチルブチレート(HMB)とグルタミンと併せて経口投与すると、筋肉減少が抑制され、除脂肪体重と免疫機能が向上しました。
早産児
早産児における重度の腸管炎症(壊死性腸炎)のリスクを低減することが示されています。低出生体重・早産児で炎症が起きやすいのは、腸内での一酸化窒素産生に必要なアルギン濃度が低いことが一因と考えられています。
相互作用と副作用
L-アルギンは降圧薬と併用すると血圧低下と心筋への血流増加をもたらすため、医師の指導が必要です。シルデナフィル(バイアグラ)との同時使用は過度の血圧低下を引き起こす可能性があります。経口投与では吐き気や下痢が報告されていますが、鎌状赤血球症の危機やヘルペス再燃を悪化させる可能性も指摘されています(エビデンスは不十分)。高用量の静脈投与は代謝性アシドーシスを引き起こすことがあり、過剰なNOは脳組織に対して毒性を示します。
