なぜFDAは食品中の不純物を許容するのか

はじめに

米国食品医薬品局(FDA)は、食品中に存在するさまざまな不純物を「GRAS(Generally Recognized as Safe、一般的に安全と認められる))」というカテゴリーで管理しています。私たちが口にするほぼすべての食べ物には、化学汚染物質、金属、自然毒、農薬などが微量に混在しています。空気や水に含まれる微細な汚染物質は、植物や動物、魚介類に取り込まれ、最終的に食卓に届くため、完全に純粋な食品を作ることは不可能です。FDAは不純物を完全に排除できないことを前提に、許容できるレベルを設定しています。

化学的汚染物質

食品に含まれる代表的な化学汚染物質とその対策を紹介します。

  • 農薬:作物を守るために使用されますが、残留農薬は洗浄で大幅に減少します。FDAは果物や野菜は必ず流水でしっかり洗うことを推奨し、約83%の農薬が除去できると見積もっています。
  • アクリルアミド:2002年に食品中で初めて確認された白色結晶性物質で、発がん性が指摘され、動物実験では高用量で神経障害を引き起こすことが報告されています。現在のところ、ヒトへの健康影響は未確定です。
  • ポリ塩化ビフェニル(PCBs):古い電気機器が埋め立てられる際に大気中に放出されます。また、汚染された水体からも蒸発により拡散します。
  • デオキシニバロール(DON):小麦製品に付着する有毒カビ毒です。加工時に減少させることは可能ですが完全に除去できません。現時点では公衆衛生上の重大なリスクとはみなされていません。

有機的汚染物質

食物に混入し得る有機汚染物質には、齧歯類の毛や糞・尿、昆虫の断片、卵、幼虫などがあります。これらは完全に除去できないため、FDAは「最大許容レベル」を設定し、健康被害のリスクを最小限に抑えるよう指導しています。多くは微小な微生物粒子であり、実質的な健康リスクは低いと考えられています。

「自然」または「有機」食品

「自然」や「有機」食品は加工が少なく、健康的とイメージされがちですが、実は有機汚染物質が多く残りやすいという側面があります。加工が進むほど、熱処理や機械的除去により有機汚染物質は減少します。したがって、"100%ピュア"と表示された食品でも、実際にはFDAの販売基準を満たす程度の純度であるに過ぎません。

食品加工の役割

加工食品は必ずしも健康に悪いわけではなく、むしろ化学物質や農薬の除去に貢献しています。例えば、リンゴをアップルソースに加工するとベノミル(殺菌剤)の約83%が除去され、オレンジジュースでは98%、トマトジュースでは86%が減少したという研究結果があります。

まとめ

1862年、エイブラハム・リンカーン大統領はチャールズ・ウェザーリルを化学局(現在のFDA前身)長官に任命しました。その後、1906年の純粋食品医薬品法の成立により、FDAは公衆衛生の保護を使命とする機関となりました。食品中の汚染物質を完全に排除できない現実を踏まえ、FDAは化学分析に基づく「許容レベル」を設定し、健康リスクが生じない範囲での管理を行っています。

食品安全 - 関連記事