低脂肪食のリスクと真実

1970年代、エンジニアのネイサン・プリティキンが「60 Minutes」に出演し、低脂肪食の効果を主張したことから低脂肪ダイエットがブームになりました。若くして心臓病と診断されたプリティキンは、食事を変えることで改善を目指しました。彼の提唱した「脂質仮説」では、飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む脂肪が、米国の主要死因である心臓病の原因とされました。しかし近年の研究では、脂肪の種類が健康に与える影響は一様ではなく、特定の脂肪はむしろ必要不可欠であることが明らかになっています。

脂肪(脂質)の役割

脂肪はエネルギー源として重要です。1gあたり約9kcalと、タンパク質や炭水化物の約2倍のエネルギーを供給します。また、ホルモンの調節、細胞膜の構成、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収にも不可欠です。

不飽和脂肪

不飽和脂肪は飽和脂肪に比べて水素結合が少なく、主に多価不飽和脂肪酸(2つ以上の二重結合)と単価不飽和脂肪酸(1つの二重結合)に分かれます。エネルギー産生時に炭素‑水素結合が分解されるため、飽和脂肪よりもやや低いエネルギーを提供します。

常温で液体になることが多く、融点が低いため酸化しやすく、加熱すると酸敗しやすいです。代表的なものはオリーブオイル、菜種油、大豆油、サフラワー油などです。

飽和脂肪

飽和脂肪は水素原子が炭素鎖に飽和しているため、常温で固体になることが多いです。細胞膜や体内の保護層に利用されますが、かつては動脈硬化の原因が飽和脂肪と考えられていました。現在は、プラークは主にカルシウムとコレステロールから構成され、血管の損傷やストレス、喫煙などが原因とされています。

コレステロールの正体

コレステロールは脂肪ではなく、ステロールというアルコール系のホルモンで、肝臓で合成されます。血液中をリポタンパク質が運び、LDL(低密度リポタンパク質)が組織へ供給し、HDL(高密度リポタンパク質)が余剰分を肝臓へ戻して胆汁酸に変換します。

低脂肪食が招く欠乏症

脂肪は必須栄養素であり、特に脂溶性ビタミンの吸収に不可欠です。脂肪摂取が極端に少ないと、疲労感、うつ状態、集中力低下、ホルモンバランスの乱れ、代謝障害などが起こりやすくなります。

また、プリティキン流の食事は炭水化物中心で、肉・卵・魚・乳製品といった動物性タンパク質の摂取が減少します。その結果、タンパク質不足や筋肉量の減少、過度なカロリー制限による体重減少が起こりやすくなります。

安全な代替策

「脂肪ゼロ」や「低脂肪」商品が増えていますが、飽和脂肪・不飽和脂肪は体に必要です。一方でトランス脂肪は健康に有害です。自然に存在する食品を選び、化学的に加工された「低脂肪」製品は糖分や添加物が多く含まれることがあるため注意が必要です。

例えば、マーガリンは植物油に水素を添加して硬化させたものです。水素添加工程で生成されるニッケルや他の化学物質は、自然のバターとは異なるリスクを伴います。自然のバターやオリーブオイルなど、未加工の脂肪を適量摂取することが最も安全です。

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