小麦の種子処理
現在、小麦は他の商業作物に比べて最も広い面積で栽培されています。小麦の栽培は人類史の初期から行われており、保存が容易で粉にしやすく、味も良いため、主要な食料となっています。収量を増やすには、管理技術や高収量品種、病害抵抗性、そして種子処理が重要です。種子処理は、コスト、作物の履歴、種子の品質、土壌条件、農法などに応じて選択されます。
種子処理の種類
種子処理には大きく分けて2種類あります。表面だけに作用する非系統的(保護剤)処理と、苗内部まで浸透して効果を発揮する系統的処理です。処理対象となる病害は、黒穂病・黒穂病類、種子・苗の病害、根腐れの3群に分かれます。種子処理は約3週間、苗を保護します。
バクテリシド(細菌剤)
バクテリシドは広範囲の細菌を殺す薬剤です。温暖で湿度が高い環境下で細菌は急速に増殖し、細菌性うどんこ病、斑点病、萎凋病、軟腐などを引き起こします。バクテリシドは細菌の増殖や作用を抑制します。代表的な製品はストレプトマイシン(商品名:Ag‑Streptomycin、Agri‑Mycin)です。また、カーバメート系新規抗菌剤や銅系殺菌・細菌剤も使用されます。
殺菌剤(ファンジサイド)
小麦は多種多様な真菌に被害を受けるため、正確な病害診断が適切な薬剤選択の鍵となります。種子腐敗を防ぐフルオジオキシニルはアスペルギルス、フザリウム、ペニシリウムに有効で、根腐病(リゾクトニア)にはペンタクロロニトロベンゼンが用いられます。殺菌剤は広域系と狭域系、系統的と非系統的に分類され、状況に応じて組み合わせて使用します。
殺虫剤
殺虫剤の使用は対象害虫の有無に基づきます。害虫がいない場合は使用しません。アブラムシは大麦黄矮性ウイルスを媒介するため、出芽後30日以内にチアメトキサムやイミダクロプリドで駆除します。シリアルリーフビートルは1本の茎に1匹以上になると防除が必要です。アーミーワーム、バッタ、ヘッシアンフライなどは被害程度に応じて推奨薬剤が異なります。
バイオ製剤(生物的防除)
種子に付着させる微生物製剤はバイオ製剤と呼ばれます。適切な環境下で微生物は種子や植物表面に定着し、害虫や病原体と戦います。ウイルス、細菌、真菌、線虫などが利用され、ヒトや非標的昆虫への毒性が低いのが利点です。一方、保存性が短く、重度の被害には効果が限定的です。代表的な微生物はバチルス・チューリンジエンス(Bt)です。
